どうくつの林蔵くん
林蔵は成長すると、その年の豊作(ほうさく)をねがうため、かぞくや村人につれられて、筑波山(つくばさん)におまいりにいくようになりました。
それからというもの、たびたび村人らと山にのぼりましたが、13歳の時のことでした。林蔵だけが夜になっても、ふもとの宿に帰ってこないのです。かぞくや村人はたいへん心配しました。
ところが、よく朝になると、手にやけどのあとが少しあるものの、元気に宿へ、もどってきました。村人が林蔵から話を聞いてみると、その夜は、頂上(ちょうじょう)のひとつである男体山(なんたいさん)の、わきを少しおりた大きな岩の下ですごしたそうです。
そこで、手に油をたらし、それに火をつけ、これを明かりにして、筑波山の神様(かみさま)に立身出世 (りっしんしゅっせ:りっぱなひとになること)を、お願いしたのだといいます。
夜のあいだ中、出世をねがったという大きな岩は、筑波山の頂上を 5分ほど下ったところにあり、林蔵の立身窟(りっしんくつ:出世をねがったどうくつ)とよばれています。その岩のそばには、子孫(しそん)の手で記念碑(きねんひ)がたてられています。
林蔵のがまん強いせいかくを、あらわしているようなお話です。