地名からたどる創作民話


 地図にかかれた地名から想像して作ったお話をおとどけします。





滋賀県長浜市力丸(りきまる)、七廻り峠(ななまわりとうげ)(1/25,000地形図岐阜12号の3「虎御前山」)
 

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滋賀県 「かしこさ」を手に入れた力丸

(かしこさをてにいれた りきまる)




 「力丸(りきまる)」は、名前のように力持ちだった。
 そして、村の西のはしには、村一番のかしこい子どもがおってな、名前を“俊”(とし)といって、それはかしこい子であったんだと。
 本をよく読み、大人顔まけの文字を書いた。
 力丸には、この俊の「かしこさ」がほしかったそうな。

 ある日のこと力丸は、俊にお願いしたんだと。おまえの「かしこさ」をかしてくれないかの。
 「おれは、そのかわり、お前にかわって、力をかすから」と。
 「うーん」と考えた俊は、力丸にこういった。
 「それではな、この前の大雨でとなりの村へつうじる道のあちこちにに、大きな岩が落ちていて、村人は大へんこまっている。あの大石をかたづけて、よい道にしてくれないだろうか」
 「おやすいこと」
 力丸は、峠道(とうげみち)までいくと、道をふさぐ大石をくだいては沢に投げ、かたづけ始めたんだと。

 夜、里へ帰ってきた、力丸は、さっそく俊にいった。
 「それでは、こんどはおれの番だ、かしこさを、少しかしてくれ」
 「わかった、かしてあげよう」
 「それではな、おれは本を読みたいのだ。なんとかしてくれ」
 「わかったよ。それでは、私が本を読むから、いっしょに声を出してみな」
 俊が本を読むと力丸も同じように声を上げた。一さつの本が読み終わった。
 「今度は、文字を書きたいな」
 「それでは、私が書く文字を見て、まねをしてここに書くといい」
 俊(しゅん)はいった。
 力丸は、俊が書くとおりに、書き始めた。なんまいかの書(しょ)ができ上がった。

 「なんかへんだなー」
 「へんなことはないよ、力丸は書も読んだし、文字も書けた。それは、私が『かしこさ』をかしたからだよ」
 俊いった。
 「そうかなー、なんかへんだなー。こんどは、俊が読まなくても、自分で書が読めるように、もっと『かしこさ』をかしてくれ」
 すこしへんだとは思いながらも、力丸は、こうたのんだそうな。

 それからというもの、力丸は、昼間は、力をだして道を作り、夜は俊の「かしこさ」をかりたんだ。
 そして、ひと月がたち、半年がたつと。
 峠道(とうげみち)は、となり村へ通じるりっぱな道になった。そして、力丸は力持ちで、しかもかしこい少年になったんだ。
 俊はというと、あいかわらず「かしこさ」だけの、ひょろひょろっとした少年であったと。

 その力丸が作った峠道が、この村の東にある七廻り峠(ななまわりとうげ)への道であってな。力丸の血すじを引くものがすむ村は、いまでは「力丸」とよばれているのは、この地方ではよーく知られたことだと。


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