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あすか けいた

第8話 日本海と太平洋の境は、どこにあるか?

とつぜんのことですが、
    ふだん、何となく本州の日本海側、太平洋側といいますが、
    日本海側と太平洋側の境はどこにあるのでしょうね?
そうですね。
    秋田県は日本海側、岩手県は太平洋側なのはわかるとして、
    北海道や青森県、そして鹿児島県などはどうなるのでしょうね。
    さらに、それぞれの道府県の中の、どこを境目にしていうのでしょうね。
    おおまかには、背骨になる山地(背稜山脈)の分水嶺を境にして、
    いうのでしょうが??。
天気予報などで、よく使いますよね。
気象のことなら、
    日本の気候区分というのがあって、
    この辺りが日本海側気候、太平洋気候、ここは瀬戸内海気候など、
    おおまかに区分されていますが、
    私の知識の範囲ではありません。
では、海のことならわかりますか。
    本州最北端にある大間町は、マグロの町として超有名ですが、
    ここでとれたマグロは、
    日本海産? 太平洋産? いや津軽海峡産となるのでしょうか。
それは、大間産です(笑)。     
質問の切り口を少し変えます。
    大間崎の北東海上で海難事件が起きたとします。
    そのとき事件は、どこで起きたと発表されるのですか。
美味しい話から離れましたね。
    日本海と太平洋、そして津軽海峡といった
    海や海峡の範囲や境といったものですね。
    それなら、少し地図の話しに近づきますね。
    せっかくですから、地名について整理します。

    地名とは、
    特定な地点、あるいは一定の広がりを持つ土地に付けられた名前です。
    ですから、対象とする地域や地点が明らかなはずです。
    そして、地図の上に書かれた注記文字によって、
    その拡がりや地点が概ね特定されるようなら、
    正しく表現された地図ということになります。
「このあたりAという地名が書いてあるから、
    そして、となりのBという地名がここに書いてあるから、
    このあたりまでがAの範囲」といった具合ですね。
そうそう。
    それは何も陸に限ったことではありません。
    海図における名称、○○海、△△海峡、××海山
    といったものであっても、同じようなことです。
    それらの名称の範囲が明らかにならなければ、
    正しく地図(このときは海図ですが)に表現できません。
なるほど
    では、日本海と太平洋、そして津軽海峡といった、
    海や海峡の範囲や境も決められている。
太平洋はいかにも広すぎて話が進めにくいので、
    日本海と津軽海峡に注目して、
    日本海はどこまで、太平洋はどこからいうのかを探ってみましょう。

    1919年ごろから、
    海の境界やそれを結ぶ海峡を明らかにしようとする
    国際的な動きがありました。
    各国の水路局の集まりである「国際水路局」によって、
    1928年にはそれぞれの境界を示した
    出版物(Limits of Oceans and Seas)が刊行されました。
    そこでの津軽海峡とは、図のように、
    東口は尻屋崎と恵山岬を結んだ線、
    西口は竜飛岬と白神岬を結んだ線までをいいます
    (ちなみに、海図では「岬」「崎」を使わずに、「埼」を使います)。

    そして、この付近での日本海の東端は、
    津軽海峡の東口までをいいます。
    詳細は省略しますが、日本海の北の端は間宮海峡、
    南東の界は関門海峡の西口、
    といったように細かく決まっています。

へー、そんなに細かくきまっているんですか。
そうです。
    質問の答えですが、
    大間崎の北東で海難事件が起きたとき、
    その地点が尻屋崎と恵山岬とを結んだ線のさらに東側なら、
    「津軽海峡に近い太平洋で起きた事故」、
    その西側なら「津軽海峡(あるいは日本海の東)で起きた事故」になります。
ああ、すっきりした。
    マグロは、大間産ということで!

日本海と太平洋、そして津軽海峡の境

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