少年の愛読書(あいどくしょ)は、マンガと地図帳であった。
せまい炭住(たんじゅう:炭鉱のじゅうたく)での大家族、ゆっくりできるのは、ふとんの中だけ。二つの愛読書はいつも近くにあった。山とつまれた漫画本は、自分では買うことができなかったから、すべて級友(きゅうゆう)などからのかり物だった。
地図帳は、教科書らしくない教科書。宿題の材料にならないことが、うれしかった。
いつしか、日なたで空想(くうそう)にふけり、日本の、世界の国名や地名を暗記する少年になっていた。
そんな少年が「飛ぶ夢」を見なくなってから書いたのが、空想の動物地図(くうそうのどうぶつちず)である。
■空想の動物地図